PEI(ポリエーテルイミド)とは?その機能や特徴、加工について、プラスチック精密加工のプロが徹底解説。

耐熱性や機械的強度に優れた「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」。その中でも、高い寸法安定性と難燃性、そして美しい琥珀色の透明性を持つことで知られるのが「PEI(ポリエーテルイミド)」です。一般的にはSABIC社の商標である「ウルテム(Ultem)」の名で広く親しまれています。

医療機器から半導体製造装置、航空宇宙産業まで、極めて過酷な環境下での使用に耐えうるPEIですが、その優れた特性ゆえに、切削加工においては特有のノウハウと高度な技術が求められます。

本記事では、プラスチック精密加工のプロフェッショナルである日成工業が、PEI(ウルテム)の基本的な特徴や物性、PEEKなど他の材料との違い、そして切削加工における注意点までを徹底解説します。

PEI(ポリエーテルイミド)とは?

PEI Plastic

PEIの基本概要と代表的なブランド「ウルテム(Ultem)」

PEI(Polyetherimide:ポリエーテルイミド)は、非晶性のスーパーエンジニアリングプラスチックです。プラスチックの中でも最高クラスの耐熱性を誇りながら、機械的強度、電気特性、耐薬品性など、あらゆる面でハイレベルなバランスを保っています。
特に有名なのが、SABIC(サビック)社が製造・販売する「ウルテム(Ultem)」樹脂です。市場に出回っているPEI素材の多くがこのウルテムを原料としており、図面上の材質指定においても「ウルテム」あるいは「Ultem 1000(非強化グレード)」と記載されることが多々あります。

PEIの化学式
PEIの構造式

PEEKなど他のスーパーエンプラとの違い

同じく耐熱性に優れたスーパーエンプラとして「PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)」が挙げられますが、両者には明確な違いがあります。 PEEKが「結晶性」樹脂であり不透明(褐色~黒色)であるのに対し、PEIは「非晶性」樹脂であり、琥珀色(アンバー)の透明な外観を持ちます。そのため、内部の流体を確認したい部品や、光を透過させる必要がある耐熱部品にはPEIが適しています。 また、一般的にPEEKと比較するとPEIの方が材料コストが抑えられる傾向にあるため、耐熱温度(PEIは170℃、PEEKは250℃程度)の条件さえクリアできれば、コストダウンを目的とした代替材料としても有力な選択肢となります。

図表:PEI(ウルテム)の耐熱性
PEIとその他樹脂の比較 / 耐熱性一覧

設計者が知っておくべきPEIの5つの優れた特徴・物性

PEI Properties

PEI(非強化グレード:Ultem 1000相当)の代表的な物性値は以下の通りです。

特性項目単位代表値
物理的特性密度(比重)g/cm³1.27
吸水率(23℃、24時間)%0.25
機械的特性引張強さMPa105
曲げ強さMPa150
アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)J/m50
熱的特性連続使用温度170
荷重たわみ温度(1.82MPa)200
燃焼性(UL規格)V-0
電気的特性絶縁破壊強さkV/mm33
PEI(非強化グレード:Ultem 1000相当)の代表的な物性値
※上記は参考値であり、メーカーやグレードにより異なります。
  1. 高い耐熱性(連続使用温度170℃)
    PEIは非晶性プラスチックでありながら、連続使用温度170℃という極めて高い耐熱性を持ちます。高温環境下に長時間曝されても、その優れた機械的物性を維持することができます。
  2. 優れた機械的強度と高い寸法安定性
    非晶性樹脂の最大のメリットである「寸法安定性」に優れています。温度変化による収縮や膨張が小さく、成形時や切削加工後の寸法変化が起きにくいため、厳しい公差が求められる精密部品に最適です。クリープ特性(持続的な荷重に対する変形のしにくさ)も良好です。
  3. 難燃性(UL94 V-0)と低発煙性
    PEIは難燃剤を添加することなく、素材そのものでUL94 V-0の自己消火性を有しています。また、燃焼時の発煙量が非常に少なく、有毒ガスの発生も極めて低く抑えられるため、航空機や鉄道車両などの密閉空間で使用される部品として高く評価されています。
  4. 耐薬品性・耐熱水性(煮沸消毒への耐性)
    非晶性樹脂は一般的に薬品に弱い傾向がありますが、PEIは例外的に幅広い薬品(酸、アルコール、弱水溶液など)に対して優れた耐性を持ちます。また、高温の蒸気や熱水に対する耐性(耐熱水性)も高く、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)処理を繰り返しても物性低下が少ないのが特徴です。
  5. 優れた電気特性(絶縁破壊強さ)
    広範囲な温度や周波数領域において、安定した電気絶縁性を発揮します。絶縁破壊強さが高く、誘電正接が低いため、電子部品や半導体検査装置の周辺部品として重宝されます。
PEIのブロック材料の画像。外観は琥珀色が特徴的。
PEIのブロック材料
三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ製のPEIグレード「セミトロン(Semitron™)」の画像。外観は黒色。
PEIの帯電防止グレード「セミトロン(Semitron™)」
三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ社製)

PEI(ウルテム)の主な用途・採用される業界

Applications

医療・バイオ機器部品

オートクレーブ滅菌処理への耐性と透明性を活かし、手術用器具のグリップ、歯科用機器、分析装置の部品などに採用されています。

半導体製造装置・電子部品

高い寸法安定性と電気絶縁性が求められるICテストソケット、コネクタ、プリント基板関連部品に使用されます。

航空宇宙・自動車関連部品

軽量でありながら高い難燃性と低発煙性を持つため、航空機の内装部品、自動車のヘッドライターリフレクター、センサー部品などに最適です。

PEIの切削加工における難しさと注意点

PEI Properties

PEIは切削加工が比較的容易な部類に入りますが、スーパーエンプラ特有の性質により、設計通りの精度を出すためにはいくつかクリアすべきハードルがあります。

残留応力による「割れ・クラック」のリスク

PEIはノッチ(切り欠き)感度が高く、鋭角なコーナー部などに応力が集中すると、そこを起点としてクラック(割れ)が発生しやすい性質があります。切削加工時のクランプ(固定)の圧力や、刃物を当てる際の衝撃にも細心の注意が必要です。

適切なアニール処理(熱処理)の重要性

加工前の素材に内在するひずみや、切削加工によって生じた残留応力を取り除くため、適切な温度管理のもとでアニール処理(ひずみ取り熱処理)を行うことが極めて重要です。これを怠ると、加工中や加工後に深刻な寸法変化やクラック、ソルベントクラック(薬品に触れた際の割れ)を引き起こす原因となります。

切削熱のコントロールと工具選定

熱伝導率が低いため、加工時に発生した摩擦熱が逃げにくく、素材そのものが熱膨張を起こして寸法精度が狂うリスクがあります。最適な刃物(超硬工具など)の選定と、クーラント(切削油)を用いた適切な温度管理、そして微細なバリの発生を防ぐための送り速度・回転数の微調整など、職人の経験値が問われます。

PEI(ウルテム)の加工サンプル画像。治具用途。
PEI(標準グレード)の加工サンプル
「セミトロン(Semitron™)」の加工サンプルの画像。勘合製品。
PEIの帯電防止グレード「セミトロン」加工サンプル

日成工業のPEI(ウルテム)精密加工の強み

We Excel at PEI Machining

PEI(ウルテム)の特性を最大限に引き出し、設計図面通りの高精度な部品を生み出すためには、材料の挙動を熟知した加工ノウハウが不可欠です。

複雑形状・微細加工にも対応する切削技術

日成工業では、最新の5軸マシニングセンタやNC旋盤を駆使し、PEIの切削加工におけるクラックや熱膨張のリスクを最小限に抑えながら、他社で断られるような複雑形状や微細な穴あけ加工にも対応します。バリ取りなど、仕上げ工程に至るまで細部まで妥協しません。

厳しい寸法公差をクリアする徹底した品質管理

温度管理の行き届いた検査室にて、三次元測定機や画像測定機を用いた厳格な品質検査を実施しています。PEIの高い寸法安定性を活かし、ミクロン単位のシビアな公差要求にもお応えします。

材料調達から加工、検査までのワンストップ対応

PEI(ウルテム)の板材や丸棒の調達から、アニール処理、高精度な切削加工、そして最終検査までを社内でワンストップ管理しています。お客様の開発スピードを落とさない、スムーズで高品質なモノづくりをサポートいたします。

まとめ:PEIの部品製作・精密加工ならご相談ください

Conclusion

PEI(ポリエーテルイミド/ウルテム)は、耐熱性、寸法安定性、難燃性など、多くの優れた特性を持つスーパーエンプラです。しかし、その性能を最終製品で発揮させるためには、素材の特性を深く理解した精密な切削加工技術が欠かせません。

「図面を引いたが、加工できる会社が見つからない」 「PEIで微細な部品を作りたいが、クラックが心配」 「PEEKからPEIへの材質変更を検討している」

このようなお悩みをお持ちの設計・開発者様は、ぜひ一度、日成工業にご相談ください。プラスチック精密加工のプロフェッショナルとして、最適な加工ソリューションをご提案いたします。