PBIとは?その機能や特徴、加工について、プラスチック精密加工のプロが徹底解説。
PBI(ポリベンゾイミダゾール)は、最高クラスの耐熱性を持ち、優れた機械的強度を持つプラスチックです。材質として硬いものの加工性は良好であり、寸法精度が安定するため、複雑な形状であっても高精度な切削加工が可能です。またPBIにはいくつかグレードがあり、製品仕様に応じて素材の選択が可能です。
機能面で優れたPBIですが、その一方で材料の購入費用が非常に高額であります。
日成工業は、PBIの精密な機械加工において、刃物や治具の選定など豊富な加工経験とノウハウを持っています。質の高いオーダーメイドの切削加工品をご提供します。
PBIとは
PBI(ポリベンゾイミダゾール)樹脂は、NASA(アメリカ航空宇宙局)やAFML(アメリカ空軍材料研究所)とともに開発された高機能樹脂です。PBIは、さまざまな機能性を有していますが、とりわけその耐熱性と機械的強度に優れたスーパーエンプラです。熱分解温度は600℃を超え、樹脂としては最高クラスの高い耐熱性を備えています。外観は、滑らかなやや光沢のある黒色です。航空宇宙産業や半導体、産業機器など、さまざまな産業で使用されています。PBIの加工は、材料自体が硬いものの被削性が比較的良好であり、寸法精度が安定しているため、高精度な切削加工に適しています。


PBIの特徴
PBIは、樹脂最高クラスの高い耐熱性に加え、引張強度などの機械特性や摺動特性にも優れています。高温な環境下で、使用することができる高機能プラスチックです。その一方で、吸水性がやや高いため、水を使用する環境下では寸法や機能的な特性に変化が生じる場合があります。
主なPBIの特徴(数値は標準グレードの「SCM7000」)は以下の通りです。
- 耐熱性:熱分解温度600℃超え、荷重たわみ温度(1.8MPa)410℃、ガラス転移温度(Tg)420℃とプラスチック最高クラスの耐熱性
- 機械的特性:アルミと同レベルの引張強さ(160MPa)のほか、曲げ強さ(220MPa)などでも優れる
- 耐摩耗性:高温下でも良好な耐摩耗性を有し摺動特性に優れる
- 耐薬品性:酸・塩基、有機溶剤に対して高い耐性
- 真空中のでアウトガスが少なく耐プラズマを持ち、耐放射線、難燃性(UL94V-0を取得した素材)や電気的性質を備えている
- 機械での加工性が良く、高精度な複雑形状が可能
PBIの種類
PBIには、特性の異なるグレード(種類)があります。機能性をさらに強化したラインナップになります。特性と用途について、代表的なグレードを紹介します。
SCM7000(標準グレード)
SCM7000は、PBI樹脂のナチュラルグレードであり、高い耐熱性と低膨張率、低熱伝導な特性とともに、高強度かつ高硬度な機械特性を持ちます。また、プラズマ耐性と、酸・塩基、有機溶剤に対する強い耐性があるのが特徴です。
SCM7000HP(半導体製造工程用グレード)
SCM7000HPは、7000シリーズでも不純物とアウトガスを抑えた、高純度なグレードです。真空チャンバーなど半導体製造装置での使用を想定しています。
SCM7400(導電性グレード)
SCM7400は、導電性を強化したグレードです。安定した電気特性を持ちます。
SCM7600(炭素繊維強化グレード)
SCM7600は、カーボン繊維を添加したグレードです。耐摩耗性を強化し、高い摺動特性を持ちます。
SPR7960(PEEKアロイ炭素繊維強化グレード)
SPR7960は、PEEKとカーボン繊維を混合したグレードです。PBIの粒子が島状に分散することで、PEEK単体では得られない高い物性を持ちます。 特に、高いクリープ特性と摺動特性が特徴であり。ナチュラルグレードであるSCM7000シリーズと比較して、吸収率も向上しています。
項目 (試験の条件・規格) | SCM7000 | SCM7000HP | SCM7400 | SCM7600 | SPR7960 |
---|---|---|---|---|---|
引張強さ (23°C・ISO527) | 160MPa | 160MPa | 100MPa | 160MPa | 220MPa |
引張破壊ひずみ (23°C・ISO527) | 3.0% | 3.0% | 1.5% | 1.5% | 1.2% |
曲げ強さ (23°C・ISO178) | 220MPa | 220MPa | 150MPa | 245MPa | 310MPa |
曲げ弾性率 (23°C・ISO178) | 6.5GPa | 6.5GPa | 7.0GPa | 9.5GPa | 20GPa |
ノッチ付きシャルピー衝撃強さ (23°C・ISO179) | 4.0kJ m-2 | 4.0kJ m-2 | – | 3.5kJ m-2 | – |
線膨張率 (< Tg・JIS K7197) | 23ppm °C-1 | 23ppm °C-1 | – | 28ppm °C-1 | 26ppm °C-1 |
表面抵抗値 (23°C・ANSI/ESD STM11.13) | >1013 Ω | >1013 Ω | 103–109Ω | <103 Ω | – |
吸水率 (23°C、24hr・ISO62) | 0.40% | 0.40% | 0.40% | 0.40% | 0.15% |
PBI各グレードの主要物性
( PBIアドバンストマテリアルズ社が測定した代表値から制作)
PBIの切削加工
PBIは、非常に硬いプラスチック材料です。切削刃物の摩耗が大きいので、PBIの切削加工では一般的に超硬工具を使用します。炭素繊維やPEEKが混合された種類など、グレードによって加工性の違いはあるもの、おおむね良好と言えます。耐熱性の高い素材であり、熱による膨張や収縮といった変化が少ないため、寸法精度は安定します。そのため、高精度な精密切削加工に向いています。高機能な樹脂PBIは、その一方で、材料費用が高額であることがデメリットです。
日成工業は、PBIの豊富な加工実績があり、標準グレードをはじめとした様々なグレードでの加工依頼を受けております。刃物と治具の選定に関するノウハウや、加工データの蓄積があることが強みです。複雑な形状であっても高精度な加工が可能であり、高品質なPBI加工製品をご提供いたします。


まとめ
スーパーエンプラ最高クラスの耐熱性と、機械的強度や耐摩耗性に優れた高機能プラスチックであるPBI。優れた機能性を持ちながらも、切削加工性もおおむね良好であり、幅広い分野で使用されいます。PBIには、機能特性を強化した様々なグレードのラインナップがあり、製品仕様に応じて選択が可能です。他方で、吸収率がやや高いこと、材料費用が高額であることが、デメリットと言えます。
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